【大学の授業まとめ】規模の経済の効果による貿易促進
このシリーズでは、経済学部で受けた授業をまとめたものをお届けします。もちろん自分の勉強のためではありますが、「大学の授業ってどんなことやるんだろう」と疑問をお持ちの方や、「ちょっとした教養を身に着けたい」という方におすすめです。
今回のテーマは「規模の経済の効果による貿易促進」です。
規模の経済とは何でしょうか。これは生産量を増やせば増やすほど、平均費用が小さくなるという効果です。費用は、固定費用と可変費用に分類できます。固定費用とは、工場や機械など巨額だけど、簡単に買う量を変更できないものにかかる費用のことです。一方、可変費用とは、原料などのように買う量を変えられるものになります。言い換えると、生産量に依存して動く費用のことです。
さて、ここで固定費用をFC(Fixed Costs)、可変費用をkq(kは生産量qに依存する定数)とします。そうすると、総費用は二つを足し合わせて
FC + kq
と書けます。ここで、規模の経済性の効果を見たいので、生産量を2倍にしてみましょう。そうすると、固定費用は生産量に依存しないのでFCのままですが、可変費用はk(2q)となります。そのため、この場合の総費用は、
FC + 2kq < (前の総費用の2倍) = 2(FC + kq) = (FC + 2kq) + FC
と書けます。そして、これは、前の総費用の2倍よりも小さいですね。そのため、生産量を増やすと、そこにかかる平均費用が減少します。これは、貿易をする理由になります。なぜなら、二つの国があって、片方が一つの財の生産に特化し、もう一方は別の財の生産に特化した方が、両国の平均費用が小さくなるからです。この平均費用の減少のメリットと、貿易にかかるコスト(輸送費など)との差額で儲けられるなら、貿易したほうがいいだろうということです。
例えば、以下のような状況を考えてみます。
A国: 財XとYを供給する工場2コ(2 × FC)、 生産量 X: 1t、Y :1t
B国: 財XとYを供給する工場2コ(2 × FC)、 生産量 X: 1t、Y :1t
というもので、それぞれの総費用を考えてみましょう。
両国とも固定費用は2FCで、生産量は合わせて2(t)だから、総費用は
2FC +2k
と書けます。では、輸送費なしと仮定して、貿易してみましょう。この時、
A国: 財Xに特化して工場1コ(1 × FC)、生産量 X: 2t
B国: 財Yに特化して工場1コ(1 × FC)、生産量 Y: 2t
として、A国からB国に財Xを1t、B国からA国に財Yを1t輸出すれば、貿易する前と供給量は同じになります。ここで、費用を見てみましょう。両国とも固定費用はFC、可変費用は2kとなるので、総費用は
FC + 2q > 2FC +2k
となり、貿易する前よりも費用をFCだけ減らすことができました。こうして、簡単なモデルを考えることで、規模の経済の効果がなぜ貿易を促進するのか、その意味を考察することができました。