【大学の授業まとめ】市場の失敗を4つ紹介

このシリーズでは、経済学部で受けた授業をまとめたものをお届けします。もちろん自分の勉強のためではありますが、「大学の授業ってどんなことやるんだろう」と疑問をお持ちの方や、「ちょっとした教養を身に着けたい」という方におすすめです。

今回のテーマは「市場の失敗を4つ紹介」です。

「市場の失敗」という単語は、経済学をやったことある人なら聞いたことがあるかもしれません。以前、経済学では、完全競争市場という有名な前提条件があり、その条件の下で売り買いすれば、需要者の満足度、供給者の利潤ともに最大にできる資源配分が勝手に実現してくれると紹介したと思います。今回は、そんな素晴らしい前提条件が崩れて、最適な資源配分が実現されない4パターンを紹介していきます。

  1. 外部性

外部性とは、市場を通さずに財が人に影響を与えることです。市場があるということは、その財から得るためにお金を払い、財を獲得するという獲得方法になります。しかし、外部性があると、お金を払わずに、財の影響を受けることができます。例えば、近隣の家のイルミネーションを見る(良い影響なので、正の外部性という)、近くの工場の汚水が魚に影響を与えて、漁業の人が困る(悪い影響なので、負の外部性という)というようなことが考えられます。

  1. 情報の非対称性

情報の非対称性とは、一方と他方の間で情報の質や量に差が出ることです。よく例に挙げられるのは、中古車市場の需要者は、特にエンジンや燃費などの情報提供されず、主に外見などの重要でない情報で購入を決めてしまうという話です。このように情報に差があると、人々の行動が自分だけの利益最大化から、相手の行動も読んだうえでの行動になってしまうため、上手く幸せになれないということだと考えられます。

  1. 公共財の存在

公共財とは、簡単に言うと、お金を払わなくても、みんなが同時に利用できる財です。「お金を払わなくても利用できる」という性質は非排除性、「みんなが同時に利用できる」という性質は非競合性と呼ばれます。例としては、公園や一般道路などがあげられますが、非排除性と非競合性を同時に満たす財はあまり存在しません。

  1. 規模の経済の存在

規模の経済とは、以前もやったように規模が大きくなる、つまり生産量が増えると、平均費用が減少するという性質です。これはよく巨大な固定費用が原因で起こることがあります。例えば、電力会社はその設備(発電所やその供給設備)などは高額ですが、利用者一人増えたところでそのコストはほとんど変わりません。この形で、巨大な固定費が新規参入を妨げて、独占状態になってしまいます。独占状態になると、企業は金額を決められるようになってしまうので完全競争市場が成立しなくなります。

 

以上の4つが市場の失敗の4パターンです。これらを防ぐために、政府が必要です。つまり、政府は市場を健全に動かすためのサポート役のようなものです。例えば、規模の経済で独占状態になる企業には独占禁止法などで介入したり、情報の非対称性を防ぐために、国家資格を設けたりしていると考えられます。

【大学の授業まとめ】完全競争市場とは?

このシリーズでは、経済学部で受けた授業をまとめたものをお届けします。もちろん自分の勉強のためではありますが、「大学の授業ってどんなことやるんだろう」と疑問をお持ちの方や、「ちょっとした教養を身に着けたい」という方におすすめです。

今回のテーマは「完全競争市場とは?」です。

皆さん完全競争市場という単語を聞いたことがありますか。経済学を学んだ人なら聞いたことがあるかもしれません。完全競争市場は経済学でよく用いられる「前提条件」です。現実はとても複雑で全部を数式化することはできないので、まあ大体これくらいが正しいよね、って感じでおかれる前提のことです。なので、この仮定がすべて現実と一致することはほとんどあり得ないですし、非現実だなとさえ思えます。だけど、この前提を置くことで見えてくる経済の姿もあるのです。

では、この完全競争市場の内容を見てみましょう。大体5つくらいの条件で書かれます。

  1. すべての財は同質財である。(同じ財がすべて同じであること ガソリン、)
  2. すべての供給者がプライステイカーであること(1企業の行動が価格に影響を与えない→価格は固定されてる)
  3. 市場への参入退出が自由(儲けと思ったら参加できるし、損だったら出てっていい)
  4. すべての財に市場が存在
  5. 需要者と供給者の間に同様の情報が平等に与えられている

どうでしょうか。これら条件が成り立つと、個々人の需要者は効用最大化、供給者は利潤最大化行動をとることで、社会的に一番幸福な状態になるという話がされます。いわゆる社会的余剰が最大になるのです。社会的余剰っていうのは、需要曲線と供給曲線の×の左側の部分です。(→×)

つまり、完全競争市場が成立するなら、政府が価格調整や数量調整、徴税をすることで、社会的余剰が小さくなって、社会的な幸せが減るから、政府は介入しないでくださいという論理が成り立ちます。しかし、これが成立しないため、政府が役割を果たしてくれないと困ってしまいます。

【大学の授業まとめ】規模の経済の効果による貿易促進

このシリーズでは、経済学部で受けた授業をまとめたものをお届けします。もちろん自分の勉強のためではありますが、「大学の授業ってどんなことやるんだろう」と疑問をお持ちの方や、「ちょっとした教養を身に着けたい」という方におすすめです。

今回のテーマは「規模の経済の効果による貿易促進」です。

規模の経済とは何でしょうか。これは生産量を増やせば増やすほど、平均費用が小さくなるという効果です。費用は、固定費用可変費用に分類できます。固定費用とは、工場や機械など巨額だけど、簡単に買う量を変更できないものにかかる費用のことです。一方、可変費用とは、原料などのように買う量を変えられるものになります。言い換えると、生産量に依存して動く費用のことです。

さて、ここで固定費用FC(Fixed Costs)可変費用kq(kは生産量qに依存する定数)とします。そうすると、総費用は二つを足し合わせて

FC + kq

と書けます。ここで、規模の経済性の効果を見たいので、生産量を2倍にしてみましょう。そうすると、固定費用は生産量に依存しないのでFCのままですが、可変費用k(2q)となります。そのため、この場合の総費用は、

FC + 2kq < (前の総費用の2倍) = 2(FC + kq) = (FC + 2kq) + FC

と書けます。そして、これは、前の総費用の2倍よりも小さいですね。そのため、生産量を増やすと、そこにかかる平均費用が減少します。これは、貿易をする理由になります。なぜなら、二つの国があって、片方が一つの財の生産に特化し、もう一方は別の財の生産に特化した方が、両国の平均費用が小さくなるからです。この平均費用の減少のメリットと、貿易にかかるコスト(輸送費など)との差額で儲けられるなら、貿易したほうがいいだろうということです。

例えば、以下のような状況を考えてみます。

A: XYを供給する工場2コ(2 × FC)、 生産量 X1tY 1t

B: XYを供給する工場2コ(2 × FC)、 生産量 X1tY 1t

というもので、それぞれの総費用を考えてみましょう。

両国とも固定費用2FCで、生産量は合わせて2(t)だから、総費用は

2FC +2k

と書けます。では、輸送費なしと仮定して、貿易してみましょう。この時、

A: Xに特化して工場1コ(1 × FC)、生産量 X2t

B: Yに特化して工場1コ(1 × FC)、生産量 Y2t

として、A国からB国に財X1tB国からA国に財Y1t輸出すれば、貿易する前と供給量は同じになります。ここで、費用を見てみましょう。両国とも固定費用FC可変費用2kとなるので、総費用は

FC + 2q > 2FC +2k

となり、貿易する前よりも費用をFCだけ減らすことができました。こうして、簡単なモデルを考えることで、規模の経済の効果がなぜ貿易を促進するのか、その意味を考察することができました。

【大学の授業まとめ】三面等価の原則とは?

このシリーズでは、経済学部で受けた授業をまとめたものをお届けします。もちろん自分の勉強のためではありますが、「大学の授業ってどんなことやるんだろう」と疑問をお持ちの方や、「ちょっとした教養を身に着けたい」という方におすすめです。

今回のテーマは「三面等価の原則とは?」です。

皆さんはGDP三面等価の原則という言葉を聞いたことがありますか?簡単に言うと、GDPには支出面、所得面、生産面から見たGDPというものがあって、それらの額がすべて一致するという原則です。でも、これが成立するにはいくつか条件があるのです。今回はそれがテーマとなっています。

支出面から見たGDPというのは、需要面、つまり民間企業や家計、政府が支出した金額から推計したGDPのことです。

所得面から見たGDPとは、皆さんが働いて稼いだ金額を推計したGDPのことです。

生産面から見たGDPとは、皆さんが働いて、国内に新しく生み出した金額を推計したGDPのことです。

つまり、全く別の視点から推計したGDPが等しくなるというのが三面等価の原則なのです。しかし、これは統計上の数字の上でしか成立しません。ここにはトリックがあるのです。

まず生産面から見たGDPと所得面から見たGDPは常に等しくなります。これは生産した価値が家計、企業、政府、固定資本減耗という形で所得として分配されるからです。生み出したものは残らず我々に還元されるというイメージを持てば、わかりやすいかと思います。

では、生産面から見たGDPと支出面から見たGDPを考えてみましょう。支出面から見たGDPは、いわば需要のことです。簡単に言うと、家計、企業、政府がどれだけモノを買ったかということです。現実では、生産されたものと買われたものの量が一致するなど常に成り立つはずがありません。売れ残りの問題などを考えれば普通のことです。しかし、ここに統計上のトリックを使います。その年度に売れ残ったものを「在庫変動」として計上することで、無理やり生産面から見たGDPと支出面から見たGDPを一致させているのです。

以上から、「在庫投資」というトリックを使って、GDP三面等価の原則を成立させています。この「在庫投資」というのは、マクロ経済モデルのIS曲線を導出するときにもポイントになってくる部分ですので、知っておいて損はないと思います。

【大学の授業まとめ】GDPとは?

このシリーズでは、経済学部で受けた授業をまとめたものをお届けします。もちろん自分の勉強のためではありますが、「大学の授業ってどんなことやるんだろう」と疑問をお持ちの方や、「ちょっとした教養を身に着けたい」という方におすすめです。

今回のテーマは「GDPとは?」です。

皆さん、GDPという単語を聞いたことがありますか。おそらくニュースなどで多く耳にしたことがあると思います。しかし、GDPの定義を知っていますか。今回はそんなGDPをもう少し深堀してみようという話です。

では、GDPの定義とは何でしょうか。これは大体「1国で生産された付加価値の総和」という説明がされます。では、付加価値とは何でしょうか。これは、あるものに新しくくわえられた価値という意味です。例えば、ぬいぐるみを売るとき、毛糸を10円で買って、その毛糸を加工してぬいぐるみを作って、100円で売ります。この時、10円の価値しかなかった毛糸を加工したことで、90円プラスされた100円の価値を持ったぬいぐるみが生まれました。この90円が付加価値というものです。

またGDPは中学校の授業などで、「総産出額-中間投入額」と習いますが、これは簡単に言うと、「完成品からの儲け-材料費」ととらえることができます。このようにして、GDPは日本中でどれだけ材料を使って新しいものが作られたのかを見ることができます。また、日本で作られたものは分配されるので、GDPは生産面と分配面でみると必ず等しくなります。

では、分配面でGDPを見てみましょう。分配とは、平たく言うと、我々の所得です。頑張って生産した分どれだけ返ってきてるの?ってことです。分配面でみると、GDPは、

営業余剰・混合所得、雇用者報酬、間接税-補助金、固定資本減耗

で構成されています。いきなりですが、ここで、我々の経済に出てくる3人のキーパーソンを紹介します。家計、企業、政府です。基本的に家計と企業で経済を回して、不具合が起きたところを政府が補ってくれているという構図です。彼らをもとに、この分配面でのGDPの構成要素を見てみましょう。

まず、営業余剰とは、簡単に言うと企業の所得です。頑張って生産した分を営業余剰という形で企業にお返しします。

そして、混合所得とは、社長さんの所得です。なぜこんな分け方をしているかというと、社長さんは家計でもあり、企業でもあります。だから、それらを混合した所得という言い方をします。

次に、雇用者報酬です。これは企業に属する従業員の人たちがもらう所得です。つまり、家計がもらう分ですね。

また、間接税-補助金というのは、流れからわかるように政府の取り分です。

ですので、以上の4つは家計、企業、政府という観点でGDPを見ると、当然の分け方だと見えるわけです。

そして、最後に固定資本減耗ですが、これは、固定資本の価値の減少分が計上されています。つまり、機械や建物が時間を経るたびにだんだん壊れていったりすることによる価値の減少です。ですので、私たちが新しく生産した分は完全には私たちのもとに返ってこないということです。

なので、「GDP-固定資本減耗」をNDP(国内純生産)といって、本当の我々の取り分だけでGDPを見るという指標もあります。

【大学の授業まとめ】上場することのメリット、デメリット

このシリーズでは、経済学部で受けた授業をまとめたものをお届けします。もちろん自分の勉強のためではありますが、「大学の授業ってどんなことやるんだろう」と疑問をお持ちの方や、「ちょっとした教養を身に着けたい」という方におすすめです。

 

今回のテーマは「上場することのメリット、デメリット」です。

 

まず上場することとは、どういうことか知っていますか。上場するとは、証券取引所で自社の株式を投資家が自由に売買できるようにすることです。簡単に言うと、皆さんが証券取引所のサイトから株を売ったり買ったりできるようにするということです。それをしないと企業の株式は譲渡制限があるので、自由に売買ができません。では、上場とはどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。

 

メリットとして4つ挙げてみます。

①企業の信用力up(それに伴う優秀な人材募集力up、知名度upなど)

上場するためには、証券取引所からの審査、監査法人からの審査を通らねばなりません。そのため、社長が会社を私物化している企業や財務面で借金を抱えすぎている企業は上場できません。なので、簡単に倒産したりしにくい会社であるというような好印象を持たれやすくなるのです。

②資金力up

上場すると株式が自由に売買されますので、株式を発行して株主から資本をもらうという資金調達がしやすくなります。また、上にある信用力upに伴い、融資されやすくなるため、その両面から資金を集めやすくなります。

③管理体制が強化される

先に述べたように、上場するにはいろいろと審査を通る必要があるため、資金の流れを明確にしたり、社員の労働時間の管理などを強化する必要があります。つまり、経営者の独断での経営や過労などの問題が防ぎやすくなります。

④創業者のメリット

上場する前からその会社の株式を持っていた人は、上場して株式を売りに出すと大きく儲けられる可能性があります。

 

では、デメリットを考えてみましょう。

①コストが増える(非効率化)

上のメリットで書きましたが、管理体制を強化すると、その反面、確認が増えたり、手順が増えたりします。例えば、昔は経営者が素早く決断を下していたものが、会議で決めるようになったため、決断が遅くなってしまうことやいちいち作業の報告の紙を送らなければならなくなったなどが考えられます。

②支配される可能性がある

株式が自由に売買されるということは、大金持ちの人に50%以上出資されたら、会社の経営権を奪われてしまうわけです。なので、経営者が描く会社の未来と株主の描く未来が違うと経営者は思うような経営ができなくなる可能性があります。

③責任が増える

上場するということが、投資家たちに広く売買するよう株式を発行するため、投資額が大きくなるため、その分責任が重くなります。だから、上場していない時よりもミスをしにくくなるため、保守的な経営にならざるを得なくなります。

 

以上が上場することのメリット、デメリットです。皆さんは上場したほうがいいと思うのかしない方がいいと思うのかどっち派ですか。僕は経営者がとても才能のある人だったり、その会社が上場しなくても有名であるなら特に上場する必要ないかなって思います。窮屈そうですし、有名なら信用力upのメリットが一つ消えてしまいますし。

 

【大学の授業まとめ】投資運用業の受託者責任とは?

このシリーズでは、経済学部の僕が大学で受けた講義の内容をまとめたものとなっています。勉強に役立てたいというのが目的の一つではありますが、ほかにも「大学の授業ってどんなことやるんだろう」と疑問をお持ちの方や「ちょっとした教養を身に着けたい」という方にもおすすめです。

 

今日のテーマは「投資運用業の受託者責任とは?」です。

 

最初に、投資家は自分で投資するだけではなく、投資信託などの投資運用業者に自分のお金を渡して投資を任せることがあります。その際投資運用業者に生じるのが受託者責任というもので、これは、忠実義務、分別管理義務、善管注意義務、情報提供義務・計算書類等作成義務の5つです。なんだか漢字ばかりで難しいと思うかもしれませんが、投資のプロがお金を預かっていると考えれば当然だなって思うほど当たり前なことしか言っていませんので安心してください。

 

では、まず投資運用業者に投資家がお金を預けるとしましょう。その時、もちろん投資家は投資運用業者を「信頼」してお金を預けます。つまり、投資運用業者はこれからも投資家に「信頼」し続けてお金を預けてもらう必要があるのです。

そのため、ここに忠実義務が生じます。忠実義務とは、投資家のために運用することです。これは、投資家からの信頼を得るために生じる当たり前の義務といえますね。

また同時に、投資のプロとして注意を怠らないという義務も生じます。これは善管注意義務というもので、これも投資家から信頼してもらうためには当たり前のことだといえます。

次に、投資家から預かったお金と自分の財産を分けるという分別管理義務があります。これは投資家から預かったお金を投資運用業者の都合で使われないために必要な義務です。

そして、最後に信頼し続けてもらうために、成果を報告しなければなりません。これが最後の情報提供義務・計算書類等作成義務です。これで投資家に、信頼できる運用をしてますよという報告をします。

以上の5つが受託者責任です。しかし、投資運用業者が投資家から信頼されつづけるためには当たり前に行われることです。このように義務とかを必要性から眺めると面白いかもしれませんね。